緊急時に備えた2つの止血法

お疲れ様です。Loxinalです。

以前、傷についての記事を書きました。

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日常生活でできる小さな傷を対象にしていたため、出血についてはあえて触れませんでした。

今回は、事故やケガなどに伴う出血や止血をテーマに書いていきます。

止血も応急手当の一つで、手当を必要とする出血もあります。

手当が必要となる出血が起きている場合の多くは、出血以外にも外傷があったり、救急要請が必要だったりするケースが多いと思われます。

出血で恐ろしいのは出血性ショック(循環不全)です。

血液の機能や、止血のメカニズムにも触れながら止血の方法注意点を考察していきます。

血液について

止血の話をする前に簡単に血液そのものについても触れておきます。

血液は細胞の中の水分も含めた体内の水分のうちの約8%です。

成人ではおおよそ4~5Lが体の中に存在していて、体重の約1/12です。

役割としては栄養素や酸素、ホルモン等を体の隅々に送る働きを担っています。

血液は液体成分の血漿(けっしょう)と細胞成分(血球)に分けられます。

血球である赤血球白血球血小板以外が血漿と考えてもらっていいです。

血球たちの仕事は、赤血球は酸素の運搬、白血球は細菌やウイルスなどの異物の排除、古い細胞や異常な細胞の排除、血小板はこの血小板による血栓により止血の役割を果たします。

出血の分類

出血にはどの血管が傷ついて出血しているかによって種類があります。

動脈性出血

一つは動脈が傷ついて動脈血が出血する場合(動脈性出血)です。

動脈は圧が高いため、出血も勢いがあります。

また動脈血の赤血球は酸素を運んでいる途中のため、血液の色は真っ赤な色をしています。

自然に止血することはなく、放っておくとショックを起こす可能性があるためすぐに処置が必要です。

静脈性出血

もう一つは、静脈が傷ついて静脈血が出血する(静脈性出血)です。

普段ケガをしてでてくる血液はこちらの静脈血が多いです。

動脈に比べて圧も低く、にじみ出てくるように出血しているはずです。

静脈血の赤血球は酸素を運び終わっているため、血液の色は暗い赤色をしています。

処置を施さなくても、傷が小さければ自然と止血するはずです。

ただし抗血小板薬や抗凝固薬などを内服している方はこの限りではないです。

止血のメカニズム

止血の機序を書いていきますが、詳細に書こうとするとややこしいワードが多数出てきますので、簡潔に知りたい方はこの項目の最後を参照ください。

止血には血小板が必要と言いました。しかし、それだけでは完全に止血はされず、血液凝固因子というタンパク質の仲間によって完了します。

血小板のはたらき(一次止血)

血小板がどこまでしてくれるかというと、傷ついた血管から見えるコラーゲン部分にまず付着します。

付着すると活性化し、ほかの血小板も呼び寄せる物質を放出して、続々と血小板を集合させます。

こうして血小板による血栓が完成します。血小板の役割はここまでです。

血液凝固因子たちのはたらき(二次止血)

血小板の仕事が終わると、次は12種類いる血液凝固因子たちの仕事になります。

先ほどコラーゲンに付着した血小板からは、複数の血液凝固因子を活性化させる血液凝固因子(トロンボプラスチン)も放出しています。

加えて、血液の中にあるタンパク質分解酵素(血漿プレカリクレイン)と血漿タンパク質(高分子量キニノゲン)の働きによっても血液凝固因子(第Ⅻ因子)を活性化させていきます。

こうして活性化させられた血液凝固因子たちは、次々と次の血液凝固因子を活性化させていきます。

最終段階で活性化された血液凝固因子はフィブリンといい、網目状に形を変えています。

この網目状になっているフィブリンに血球たちが引っかかって、血の塊による蓋(血餅)ができて血液凝固が完了します。

俗にいうかさぶたはこの血餅が外部から見えている部分を指します。

簡単にまとめると

傷ができるとまずは血小板が簡単に塞ぎます。

そのままだと不安定なので血液凝固因子たちもはたらいて完全に塞ぎます。

完全な止血には血小板だけのはたらきでは足りないということです。

止血の方法

直接圧迫止血法

文字通り、直接出血部位をガーゼなどで強く圧迫する方法です。

第一選択はこの直接圧迫止血法になります。

出血部位が土や砂などの異物で汚れている場合は、圧迫前に流水で洗浄します。

出血部位は清潔なガーゼで圧迫することが望ましいですが、病院以外の環境ではなかなか難しいと思われます。

用意できない場合は、汚れていないハンカチなどで代用が可能です。

出血が止まったからといって圧迫しているものを取り除かないでください。

圧迫しているものの真下で血餅が形成されて出血が止まっているため、圧迫しているものが動くと血餅がはがれて再出血を起こす可能性があります。

出血が止まったことを確認した後は、テープや包帯で固定してください。

一つ注意点があり、ティッシュで傷口を圧迫するのは禁止です。

傷に張り付いて傷の内部に線維が残ったり、付着したりするためです。

医療機関に到着するまでは、最後まで自身で除去しないようにしてください。

  • 第一選択は直接圧迫止血法
  • 傷が汚れている時は流水で洗う
  • 清潔なガーゼなどで圧迫する
  • 出血部位を挙上する
  • 出血が止まったら固定する

これでもまったく出血が止まらないどんどん血が滲んでくる直接圧迫止血ができる状況ではないという場合は次の止血帯止血法を考慮します。

止血帯止血法

後に詳細を書きますが、こちらの止血法は最終手段としてください。

これは止血帯(タニケット)で動脈をターゲットに圧迫し止血する方法です。

以下に止血帯止血法が適切と考えたシーンの例を記載します。

  • 救急要請ができない環境
  • すぐに医療機関へ移動することができない
  • 四肢の完全切断によって出血している

  • 出血している複数の傷病者がいる
  • 出血となった原因がまだ近くに存在する
  • 動脈性出血であったり、出血量が明らかに多い
  • 太い動脈(大腿動脈など)の損傷に伴う大量出血

 

この方法の大きな注意点は、神経や血管、筋損傷のリスクがあるところです。

そのようなリスクがある原因としては、動脈を圧迫しているため圧迫したところより末梢側(指先側)に酸素を含んだ血液がいかなくなるためです。

また、止血帯となるものの幅が狭いと神経や血管を局所的に圧迫しすぎるため、さらに損傷のリスクが高まり。

悪い例は輪ゴムなどで、止血帯となるものは最低でも3~4cm以上の太さのものが必要と言われています。

身近な良い例だとネクタイ細く畳んだタオルなどです。

こういった理由から、止血帯止血法は訓練を受けた者のみの施行が望ましいとされています。

しかし、この方法ではないと止血ができない、この方法が適切である状況もあるため紹介しています。

もう一つの注意点は、四肢(手足)の出血にしか使えないところです。

体幹部(胸腹部)では止血帯を用いて動脈を圧迫することはできません。

頸部(首)では呼吸ができなくなるため決して行ってはいけません。

以上がこの止血法の大きな注意点です。

ここから実施の手順を書いていきますが、参考となる動画がYoutubeにありましたのでこちらも参照していただけると幸いです。

サムネイルの右下に、「生命に危険をきたす大量の出血を想定しています」と書いてある通り、冒頭でも記述しましたが、最終手段として考えてください。

訓練を受けた方は多様なシーンで行えるかと思いますが、十分な知識や技術がない方は、先ほど紹介した緊急時のみの使用を強く推奨します。

最終閲覧:2020年4月27日

ポイントは出血部位から中枢側(体幹側)に5cm~8cmほど(およそ手指3本分)離して止血帯を巻きます。<動画0:30あたり>

この時、関節にかかると十分な止血を得られないため、関節にかかるときはさらに中枢側(体幹側)に数cmずらします

止血帯を巻く場所が確定したら止血帯を巻いていきますが、巻くだけで止血を完了させるわけではありません。

止血帯をある程度巻いたら縛ります。縛った隙間に巻き上げ用の棒状のものを差し込みます。<動画0:40あたり>

次に止血が確認できるまで、ゆっくりと棒を巻き上げていきます。<動画0:50あたり>

止血が確認できた場合は、巻き上げた棒が動いて緩まないように固定してください。

加えて、止血を開始した時刻を必ずどこかにメモしてください。

また、この止血帯止血法を説明するWebで多いのが、30分に1回は緩めて血流を再開させるとか、止血の状態を確認するといった説明文が散見されます。

しかし、決して緩めないでください救急隊の到着もしくは医療機関への到着まで緩めてはいけません。

「今までは30分~1時間を目安に、一度ターニケットを緩めて血流を再開させ、虚血による組織の障害を防止する必要があるとされていましたが、現在では2時間程度は安全に使用が可能とされています」

引用:尾方純一ほか(2019:88)「やさしく学ぶ応急手当 止血の方法」山本保博監修,ぱーそん書房

緩めない理由としては、止血帯止血法が必要とされる状況、適切である状況というのは、出血を放っておくと出血性ショック(循環不全)が考えられる状況です。

直接圧迫止血法では止血が困難だったもしくは猶予がないという前提があるため、緩めると出血が再開されてしまうことが想定されます。

様々な理由から出血を迅速に抑える必要があるシーンで行う止血法のため、2時間以内に緩める必要はないと考えます。

  • 直接圧迫止血法では困難な場合に選択
  • 止血帯を巻いて縛る(出血部位から5~8cm中枢側)
  • 縛ったあとに棒を差し込み巻き上げる
  • 止血を確認したら棒を固定する
  • 止血開始時間をメモする
  • 直接圧迫止血法と出血部位の挙上の再開もしくは追加

 

血液に触れるときのリスク

他者の血液に触れる際に一番気を付けなければいけないことは感染症です。

血液を経路として感染する代表例に、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、梅毒トレポネーマ、HIVなどがあります。

場所によっては用意できない場合もありますが、液体(血液)を通さない手袋もしくは手袋代わりになるものを最低限でも装着してください。

身近なものではスーパーやコンビニのビニール袋などが使えます。

また、理想としてはマスクエプロン、ゴーグル(目を守る物)の装着も望ましいです。

最後に

「くらもとるう」さんによるイラストです

リスクがあるといった止血帯止血法について最も詳細に紹介しました。

ここまで長くなってしまった理由に、バイスタンダー(市民救助者)となる人に不用意に知らせていいものなのかどうか悩んだためです。

しかし、目の前に倒れた人間が自分の家族や恋人、友人であった場合で、この選択肢を知っていたらきっとこれを読んだあなたは実践すると考えたからです。

「なんとかして助けたい」と思える状況に、手段がないという絶望は存在してほしくないです。

傍観して死を待つか、それとも訓練を受けていないバイスタンダーだとしても、未熟な技術や知識だとしても、助けつ人があなたしかいないのならば実践してみるべきです。

この止血帯止血法を使用したことによる後遺症のリスクと、大量出血による死亡リスクとでは圧倒的に前者が優先されるべきです。

仮に自分とは関係のない人間にこの方法を実施する場合は、躊躇いがあると思います。

責められたらどうしよう、訴えられたらどうしようといった不安が発生すると思います。

ですが、止血に成功し生存ができていれば、止血法による後遺症が仮に残ってしまっても、死亡してしまうより遥かに良い結果だと私は考えます。

これは強制しているものではありません。あなたの選択肢を増やすためです。

行うかどうかの最終的判断はあなた自身です。

Loxinal

参考文献

・坂井建雄ほか(2013)「解剖生理学:人体の構造と機能①」医学書院.

・尾方純一ほか(2019)「やさしく学ぶ応急手当 止血の方法」山本保博監修,ぱーそん書房.

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